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Rice menu NAVI おコメのデザート活用
の可能性

延命寺 美也/EMMÉ シェフ

2023年6月15日
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今年、世界15カ国で発行されているレストランガイド「ゴ・エ・ミヨ」で見事、「ベストパティシエ賞」を受賞したことでも知られるアシェットデセールとワインのお店「EMMÉ」の延命寺美也シェフ。今をときめく、注目のパティシエールの一人です。期間限定で、カルローズを使ったフランスの伝統菓子「リ・オ・レ」のデザートを提供する延命寺シェフにリ・オ・レの魅力や、おコメのデザート活用の可能性についてお話を伺いました。

いま、フランス伝統菓子「リ・オ・レ」が見直されている

いま、フランス伝統菓子「リ・オ・レ」が見直されている

「いま、リ・オ・レが見直されている気がします」と語るのは、いま、注目を集めるパティシエールの一人、東京・青山「EMMÉ」の延命寺美也シェフです。「リ・オ・レ」とはライスプディングのフランスでの名称で、おコメをミルクで甘く炊いたシンプルなデザート。カヌレやフォンダンショコラなどとともにフランス伝統菓子のひとつに数えられ、フランスではビストロのデザートとして、家庭でもママンがつくるおやつとしてポピュラーな存在です。

「在学していた辻調理師専門学校フランス校の実習で、リ・オ・レを作り、初めて食べました。正直、『甘いごはんだな~』という印象で(笑)そのときは、たくさん食べられるものではないなと」

日本人の一般的な食生活で考えれば、おコメといえば一汁三菜の主役、塩っ気のあるおかずと食す白いご飯、といったイメージが順当です。おはぎや餅など、スイーツ的ポジションのアイテムもありますが、どちらかというとイレギュラーな印象。延命寺シェフの初リ・オ・レ体験の感想に、日本人ならではの食習慣が与えた影響は少なくなかったはずです。
ミレニアル世代、Z世代といった層が、消費のムーブメントを牽引すると言われる昨今。

「今、お客様の方からリ・オ・レが食べたい、という声が挙がるようになっています。実際、東京でおいしいリ・オ・レを提供するお店が増えた印象も。インスタグラムで、フランスのパティシエさんのポストをチェックしていると、リ・オ・レの入ったムースケーキがあったり、プチガトーにリ・オ・レを使っていたり。リ・オ・レは本場のプロの間でも気になるメニューになっているように感じます」

ボウルいっぱいのリ・オ・レを単体で供するということではなく、一メニューの構成要素として、リ・オ・レの味わいを上手に活用したデザートが支持されている様子。延命寺シェフのスタイルのように、デザートのプレゼンテーションが多様化したことを背景に、ミルクで炊いた濃厚で甘やかなリ・オ・レが、パフェなどにおける構成要素として活用されることにより、フルーツ、乳脂肪分の高いアイスや酸味のあるソルベ、スパイスなどとの組み合わせで、リ・オ・レの新しい側面が見出されてきたのかもしれません。
また、見逃せないのは現代の食べ手の感性です。

「10年くらい前は、日本人にとって、リ・オ・レは苦手なアイテムだったんじゃないかな?と思います。でも今は、お客様の反応が明らかに変わりました」

延命寺シェフが語るように、今、消費者嗜好の多様化が加速していると言われています。日本人にとって、リ・オ・レも“積極的に食べたい”アイテムに変貌を遂げてきているようです。

EMMÉ での「リ・オ・レ」

EMMÉ での「リ・オ・レ」

EMMÉといえば、アシェットデセール。ゴ・エ・ミヨでのベストパティシエ賞受賞が示すように、今、延命寺シェフの一皿はスイーツラバーの間で注目の的です。一皿の味わいとじっくり向き合う、本当のスイーツ好きが集うという同店。その一皿の吸引力は、味わいに感動したゲストがそのままスタッフとして働くようになった、というエピソードにも現れています(この人材難の時代に、つい先日オープン以来、初めて料理人の募集をかけるまで、人材募集をしたことがなかったのだとか!)。とはいえ、決して奇をてらった「映え」を意図するようなものではなく、一皿で本質的においしい食材の組み合わせを提案したいと延命寺シェフは言います。

「アシェットデセールというスタイルは、出来たてを提供して、その場で召し上がっていただくもの。このスタイルだからこそ実感いただける香り、口どけ、そして温度の違いを際立たせるように意識しています」

延命寺シェフのフェバリットスタイルの一つがパフェ。パフェには伝統菓子を1種類潜ませるというのをマイテーマにしているのだとか。これまで、クラフティや、熱々のブリュレパンなどをパフェの構成要素にしてきたのだそうです。その一環もあり、今年5月、フランス伝統菓子であるリ・オ・レをメインに使用した『リ・オ・レなマンゴーパフェ』を期間限定でメニューオン(※)。ミルクをたっぷり含ませ仕上げたリ・オ・レに、旬を迎えた完熟ジューシーなマンゴー、和紅茶のエキゾチックなアイスとココナッツの香り、さらに食感軽やかなライスチップをそっと添えた華やかな一品です。

「今、間違いなくお店の一番人気です!」

ほどよく芯の残るアルデンテ、ねっとり甘やかなリ・オ・レと、フレッシュなトロピカルフルーツとココナッツの香りなどが渾然一体となった味わいは、ゲストにも大好評。スイーツマニアともいえるゲストも多い同店ですが、リ・オ・レ初体験のゲストもいたようで、、、

「甘いおかゆがパフェの中に入っているなんて!という歓声があがったかと思えば、その後、幸せそうにペロリと召し上がり、ご機嫌な様子でした(笑)」

※2023年7月中旬まで提供予定

カルローズで作るリ・オ・レ イメージ通りの仕上がり

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「この『リ・オ・レなマンゴーパフェ』のリ・オ・レは、カリフォルニアのおコメ、カルローズを使用しています」

今春、延命寺シェフはカルローズの商品開発コラボプロジェクトに賛同され、その特徴をインプットしました。

「初めてカルローズを使用したときの印象は、イタリア米より粒が小さくて硬くない。日本米より粒が大きくて食感がある。なんだかいいとこ取りの印象でした(笑)」

リ・オ・レのおいしい仕上がりを目指すには?おコメへの固定観念のある日本の消費者に、リ・オ・レを無理なく受け入れていただくためには?を考えた際に、カルローズが力を発揮すると確信したのだと言います。

「勿論、日本米でリ・オ・レを作ったことも有ります。ただ、粘りが出る傾向にあるので一度ゆでこぼしたり、ベタつかないように煮込みすぎないようにする、など、よい仕上がりを目指すには細心のケアが必要。しかし、カルローズはそもそもパラリとしていて粘りが出にくいという特性をもっているので、ゆでこぼしも必要ないし失敗が少ないと思います。さっと洗ったら、温めたミルクに直接入れて、バニラビーンズで香りをまとわせながら15~20分ゆっくりゆっくり、混ぜていくだけ。ミルクとバニラの風味やコクをしっかりと吸収してくれます」

延命寺シェフの腕だけに依存せず、店のスタッフ全員が一皿を仕上げられるようにする(!)というルールをもつEMMÉにとって、カルローズのこの特性はクオリティの均質化にあたりグッドニュースでもあったかもしれません。

「仕上がりは、バニラ感豊かに、ねっとりと甘やか。それでいてベタつきすぎず、ほどよく芯の残ったアルデンテ。『リ・オ・レなマンゴーパフェ』の中で重要な役割を果たしてくれる、おいしいリ・オ・レになりました」

おコメのデザート活用の可能性

おコメのデザート活用の可能性

「山でイノシシを撃ち、山菜を採る父。料理がとても得意な母。私は新鮮な食材とおいしい料理で育ちました。子供の頃、毎晩ベッドの中で、明朝は何を食べられるかな~とワクワクしていたくらい、食べることが好き。で、それが高じてお菓子や料理を作ることも始めたのですが、学生時代、たまにクッキーやブラウニーを焼いて学校に持っていき、友人に振る舞うと、すごい!すごい!と喜んでくれて。それがとてもうれしかった。今も、お客様に食べていただき、すごい!という反応が見られたとき、とてもうれしいです(笑)」

お菓子づくりへのパッションの背景には、食べてくれる誰かの笑顔があるという延命寺シェフ。おコメはデザートの材料として、誰かを笑顔にすることはできるのでしょうか。

「おコメという食材は、今回のリ・オ・レだけでなく、デザートでの可能性は大いにあると思っています。それは、おコメという食材の味わいに加え、おコメという食材の活用で、小麦アレルギーの方々がお菓子を食べられることもパティシエールの私にとって、とても大きい。過去実際に、グルテンフリーに切り替えないといけない状況になったお客様がお菓子を食べることを諦めざるを得ず、お店にいらっしゃらなくなってしまった。それはとても辛いことでした。おコメを上手に使えば、そのように困っている方にも、皆と同じようにデザートを食べていただき喜んでいただけるのです」

歴史的にも、日本人にとっては特別な存在であるおコメ。15年前、留学先のフランスでは、“おコメは野菜のひとつである”という位置づけであることに驚いたという延命寺シェフ。

「いま、海外からいろんな食のムーブメントが日本にも波及してきています。日本の消費者はそれを柔軟に受け入れ、食の価値観や嗜好性もどんどん多様化している印象。海外での解釈同様、日本でも〈おコメは食材の一つ、おコメは野菜のひとつ〉という認識がより加速すれば、おコメの活用法がぐんと広がるのでは。いま、ちょうどそのようなタイミングが来ているのかなと感じています」

延命寺 美也さん
〈構成・文:鈴木貴亮〉
延命寺 美也

Profile
EMMÉ シェフ 延命寺 美也

京都府出身。都内のパティスリーやレストランに勤務後、東京・竹芝「ツキ シュール ラメール」、青山「ラチュレ」でシェフパティシエを務める。2019年青山に「EMMÉ」を開業。

EMMÉ