キャンプの時間は「非日常」。忘れがちな感覚が刺激されていくんです
- 福瀧キャンプやキャンプ料理をお仕事にされているおふたりに、まずお聞きしたいんですが、ズバリ「キャンプってなにがいいの?」ということ。
- 小雀いきなり広い質問きましたね(笑)
- 蓮池たしかに。
- 福瀧この記事を読んでおられる人のなかには、キャンプをやったことはないけれど前から興味がある人はおられると思うんですよ。
- 小雀なるほど……。まぁこういう仕事をしているから言うわけではないんですが、少なくともマイナスではありません。というか、むしろどんどんやってほしいと思います。
- 福瀧そう言っていただけて、まずはよかった!
- 小雀なぜならキャンプの時間は「非日常」だから。家となるテントを設営して、寝るためのマットや寝袋を準備し、テーブルやイスを組み立ててくつろぐためのリビングを整える。もうそれだけで何でも便利に揃う家とは違って、ひとつひとつ考えて動くことが求められますよね。普段の生活は朝起きて仕事して、子どもなら学校にいって……の繰り返しですから、やっぱり人はどこか退化してしまう。
- 福瀧五感も使うということですか。
- 小雀そうです。たとえば寝床の下に石があって硬いな……とか、火に近寄り過ぎたら燃えちゃうな……とか、いつの間にか風向きが変わったな……とか、普段思わないでしょ? 忘れがちな感覚が刺激されていくんです。これが脳や体の成長や発達に悪いわけがない。アウトドアで過ごすことは大人はもちろん、子どもにもとてもいい影響があると言われています。
- 福瀧確かに、家のなかでは刺激はほとんどないかも。
- 小雀あとは単純に、木漏れ日の下で家族で過ごしたり、焚き火を眺めながら気の置けない仲間とお酒を飲んだり、鳥のさえずりで目覚めたりするのは気持ちいいし、楽しいしですよね。
- 蓮池それに、料理に触れる機会が家よりも多くなるのもいい影響じゃないかな。家ではだいたい奥さんや母親が食事を作ることが多いと思いますが、火を熾したり、炭火を扱ったり、重いダッチオーブン(鋳鉄製の鍋やフライパン)を持ち運んだり……。自然と父親や子どもの出番が増えると思うんですよ。
- 小雀そうそう。家と違って、子どもは遊びの延長で楽しみながら料理にチャレンジしてくれますしね。で、包丁の使い方を誤ると手を切ったり、炭火で火の扱いを間違えばやけどをするということを知ります。そうならないために注意して道具を使って、感覚を研ぎ澄ませるんですよ。
- 福瀧子どもたちの真剣さや緊張感が伝わってくるようです。
- 小雀何が危険で痛いのか、実体験を通じて知ることができる。そういうふうに、キャンプ料理を通していつの間にか危機管理能力が備わってくるんですよ。……って、いきなり話が大きいか!(笑)
- 福瀧いえいえ! 小雀さんも、火の扱いが簡単なガスバーナーより、五感を使って工夫しながら調理する焚き火や炭火のキャンプ料理の方がお好きですよね。
- 小雀そうですね。もちろんガスバーナーは調理のメインとなる火器だしとても便利だけど、料理にワクワクする感じがあるのは焚き火なんですよね。
- 蓮池あ~それはわかる。ガスだとある程度自由に火加減が調整ができるけど、焚き火や炭火って環境によってどんどん火が変わってきますから。プリミティブなものを扱えるというよろこびや楽しさがあるというか……。火は人の営みの原点ですからね。
- 福瀧おふたりとも回答がマニアック~! でも確かに、キャンプには不便がたくさんあるんですけど、その場にあるもので小さな営みを作っていく知恵と工夫の集合体とも言えますね。心地よい自然のなかでくつろぐんだけれど、適度に頭や体も使いますから、より充足感が大きいのかもしれません。